2013年1月14日月曜日

日本と中国のアサギマダラ(亜種)の違いは?

前回、中国産の展翅標本18♂3♀と日向産17♂28♀の展翅標本を比較しました。それをもとに気づいた違いをいくつか挙げてみます。                               まず色調の違い。この標本は上2頭が日向産の♂。 下が中国産の♂です。 日本産は、全体的に前翅後翅とも黒味がより強いようです。特に後翅はその差異があるようです。中国産の後翅は色が濃いですが赤味が強い印象です。     

これは♀ですが、上2頭が日向産。 下2頭が中国産。やはり同じような変化があります。                          しかしこれらの変化は個体差があって、特に日向産の標本は、鮮度がさまざまでしたので、♂も♀もそうですが個別の判断には決定的でない感じです。   腹部背面の色。中国産は後翅の色調とほぼ同じ赤味がかった茶褐色で、個体差はほとんどありませんでした。 一方日向産のものは、黒褐色からやや赤味を帯びた暗灰褐色で、個体差が随分ありました。  この腹部の色、区別するにはかなり有力になりそう。
上翅先端の紋様。 これは日向産の♂。雌雄差はあまりない部分ですが、翅脈の5脈から6脈の間(5室)にある半透明白斑。 中国産は細長く途中が少しくびれる傾向。6室の白斑は、中国産は細長く翅端の方へ5室の白斑と同じくらい伸びている。  日向産は、5室の白斑はやや短く、6室の白斑はさらに短く5室のものの半分以下の長さ。   ここは目につきやすく、区別するには有用かも。
これは典型的な中国産。
これは6室の白斑が半分消えかけています。中国産です。
これはどちらとも判断しずらい斑紋です。日向産です。
これも日向産です。  このような紛らわしい個体は少数です。
性標です。 後翅裏の性標にある微細な白毛の広がりは日向産、中国産とも同じような個体差があり、違いはなさそうです。   この標本は日向産。腹部の色に注意。
これも日向産。
これは中国(四川省)産。
これも四川省産。
これは日向産の表です。 性標から基部へ伸びる線条の色、特に3脈にあるものは表裏とも中国産は後翅紋様の色と同じかやや明るい赤褐色。日向産のものは、表の方は付近の紋様の色調よりさらに黒っぽい印象。腹部の色はあまり黒っぽくないのがちょっと気になります。
♀の下翅。  これは中国産。 中国産の2脈3脈にある線条の色は、付近の紋様の色調よりやや薄い感じですが、
日向産のものは、色は同じく薄くなるものの灰色を帯びています。
これは日向産の1♂6♀です。 少し中国産に似ているものを集めてみました。           アサギマダラの日本亜種(Parantica sita niphonica ) は、本州から南西諸島(八重山まで)に分布し、地理的変異はほとんどない。(1972.藤岡) 台湾産のものとも区別できない。(1960.白水)  これぐらい形態は均一であるようですが、今回の日向産の個体にはやや変異?変化があるようです。この標本のように中国産にちょっと似通った変化のある個体がありました。       小生の今年の新春の夢です。梅雨の晴れ間、日本各地に集まったアサギマダラの中に中国から飛来したものはいないものかと。

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