2013年1月13日日曜日

中国と日本のアサギマダラ

中尾氏より以前頂いた多数の中国の蝶、その中のアサギマダラの標本を、年末年始ながめていました。  湖北省羅田(武漢の東約100km の所)の3♂2♀(いちばん上の列)と四川省(産地は不詳)の15♂1♀の標本です。いずれも2007年に採集されたもの。学名は、Parantica sita sita :インド~中国亜種 とされています。
これは日向の細島で採集した標本です。2008年10月22日~30日の分。秋になるとどこからか集まってきます。北日本からの移動個体もいると思うのですが、いままでマークされた個体を見たことはありません。
これも同じく細島産。10月下旬~11月1日の分。
これも同じく細島産。11月の採集。日本のアサギマダラの学名は、Parantica sita niphonica :日本亜種 とされているようです。
これは湖北省のもの。上が♂で下が♀。左の♀はちょっと感じが違うような気がするんですが、これも P.s. sita でいいんでしょうか?
これは四川省の上♂、下♀。
これは日向の細島産の左♂、右♀。  日本亜種と中国亜種の違い、区別点、手持ちの中国、台湾、タイ、ラオス等の図鑑類を見ても、図はあるものの説明はほとんどありません。  ネット検索で Moore (1883)が日光産の標本を使って niphonica を原記載した論文を見つけました。誤訳を恐れず要約すると、niphonica は tytia (中国亜種のこと)より大きく、前翅はより黒く、翅先端の線条は広く、上方の丸い斑紋は小さくより卵形。その下の外縁の丸い斑紋もより小さく並んでいる。さらに外縁の斑紋はより大きく明瞭である。  ♂後翅の翅脈は黒味がかっている。性標とそこからの線条は非常に黒い。小室の中には赤い線条はなく、非常に不明瞭な細い灰色の線がある。翅の縁にある斑紋は、多少退化している。   以上、大きさや斑紋の性状の違いの記載のみです。                                                アサギマダラは、春から初夏にかけて北上し、秋に南下して長距離移動する個体がいることが知られています。その中で、2008年12月、石川県から中国の浙江省に移動した例や、2011年12月、和歌山県から香港まで移動した例があります。南西諸島や台湾だけでなく(南北間の移動)、中国大陸の方まで移動する例があるんですね。 逆に中国大陸から日本にやってくる例はないのでしょうか? 風向きを考えると、日本に来る方がはるかに簡単そうですが。 中国大陸から来る蝶(オオヤマミドリヒョウモン)、蛾(コブノメイガ、シロオビノメイガ)、ウンカ(トビイロウンカ、セジロウンカ)、蠅(オオクロバエ)など既に知られているものもいくつかあります。                次回はこれら手持ちの標本で、日本産と中国産の違いについて指摘してみたいと思います。 

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